カット割りには意味がある
状況を理解させるカット
動画制作においてどのアングルで見せるかというカット割りは、
単なる画面の切り替えではなく、視聴者の理解や感情をコントロールするための重要な技術です。
映画やドラマを何気なく観ていると気づきにくいですが、実は、すべてのカットには明確な意図があります。
ストーリーの冒頭でよく使われる背景を大きく映したロングショットは、
エスタブリッシュショットと呼ばれ、どこで誰がどんな状況にいるのかを一瞬で理解させる役割を持っています。
たった1秒でも、このショットがあるかないかで視聴者のストーリーへの入り込み方は大きく変わります。
また、映画では冒頭以外でもロングショットが多用されますが、これは登場人物の存在感をあえて薄め、物語の世界そのものに意識を向けさせるためです。
登場人物の位置関係を示すカット
ただし、それはおすすめしません。
一方で、主人公や重要人物の顔をアップで映すカットは、その人物が物語の中心であることを示すために使われます。
アップになればなるほど表情の細かな変化が伝わり、視聴者は登場人物に感情移入しやすくなります。
複数の人物が登場するシーンでは、イマジナリーライン(180度ルール)を超えてカットを切り替えてはいけないという基本があります。
このラインを越えてしまうと、登場人物の位置関係が突然逆転して見えてしまい、視聴者は誰がどこにいて誰と話しているのかが分からなくなります。
本来向かい合っている二人が、カット割りのせいで同じ方向を向いて話しているように見えてしまう、といった混乱が起きるのです。
この位置関係を混乱させないという考え方は、実は映像だけでなく落語にも共通しています。
落語家は一人で複数の人物を演じますが、登場人物ごとに視線の向きや体の角度を微妙に変え、“右側の人物”“左側の人物” を明確に演じ分けます。
これによって観客は、舞台上に一人しかいないにもかかわらず、複数の人物がそこに存在しているかのように自然に理解できます。
もし落語家が左右の位置を曖昧にしてしまえば、誰が話しているのか分からなくなり、物語への没入感が一気に失われてしまいます。
つまり、落語の“左右の振り分け”も、映像のイマジナリーラインも、目的は同じです。観客に混乱を与えず、物語の世界に没入させるということ。
さらに映像では、アップばかりが続くと視聴者は単調さを感じてしまうため、ロングショット、ルーズショット、俯瞰、あおりなど、
さまざまなアングルを織り交ぜることで映像にリズムと躍動感が生まれます。
落語でも、声色や間の取り方を変えることで物語にリズムを生み出すように、映像もカットの組み合わせによってストーリーのテンポを作り出します。